あなたにしてくださったことをことごとく知らせなさい (4月25日週報より)

 自分の家に帰りなさい。そして身内の人に、主があなたを憐れみ、あなたにしてくださったことをことごとく知らせなさい。(マルコによる福音書5章19節)
                  
 イエス様がゲラサの地で出会った悪霊に憑りつかれた人は、自らをレギオンと名乗ったといいます。レギオンとは、当時のローマの軍隊の呼称で、5000人もの兵士によって組織される軍団のことでありました。彼の内には、それほど多くの悪霊が入り込んでいたことの表れであったということです。そのレギオンと名乗るレギオンの悪霊に、イエス様は「この人から出て行け」と命じると、レギオンはイエス様に「豚の中に送り込み、乗り移らせて」くれるなら出て行くと応えました。その願いをイエス様が許すと、悪霊はその近辺の山で飼われていた2千頭の豚の群れに乗り移り、その豚の群れがなだれを打って崖を駆け下り湖に飛び込んで溺れ死んでしまうという大惨事となったのです。そのレギオンに憑りつかれていた人は正気を取り戻しましたが、その様子を見た豚飼いたちは町や村にこの出来事を伝え、それを聞いた町の人たちがイエス様の所にやってきて、自分たちの土地から出て行ってほしいと言い出しました。彼らにとって、一人の悪霊に憑りつかれていた人が救われたことよりも、自分たちの財産である豚の群れが失われたことの方が大問題であったからです。

 この数年、日本でも豚熱という伝染病が流行って、そのために何万頭もの豚が殺処分されるという、養豚業者の人たちにとっても食肉業界の人たちにも経済的な大打撃となる出来事が続いています。新型コロナウイルスの流行に隠れて、一般的にはあまり話題とならないことのようですが、その豚を育て生計を立てている人たちにとって、自分たちの命が削られるような厳しい出来事であることに違いありません。そのことを思うと、イエス様のなさったことは、豚を飼う人たちに対して、実に残酷な仕打ちとして映ったことは間違いありません。それゆえイエス様に一刻も早く立ち去ってほしいと抗議したのも無理のないことであったと言えます。しかし、イエス様に救われた人は、その出来事によって長い間の苦しみから解放された喜びに満ちあふれる思いで、自分もイエス様と一緒にこの土地から離れお供をしたいと願い出たのでした。しかしイエス様は彼に「自分の家に帰り」周りの人に「主があなたを憐れみ、あなたにしてくださったことをことごとく知らせる」ように勧めたのです。

その言葉は決して彼にとって容易なことではなかったでしょう。自分の救いのために2千頭もの豚の群れが犠牲となり、その土地の人たちに経済的打撃を与えることとなった、その出来事を伝えることは、周りから非難や罵声を浴びせられる覚悟のいることだったからです。しかし、この人はイエス様の言葉に従い、この地方に自分に起こった出来事をことごとく伝え、それを聞いた人々を驚かせるほどイエス様のことを証ししたのでした。自分一人のために、イエス様がどれほどのことをしてくださったか、それを伝えることは決して容易なことではありません。しかし、自分一人の救いのためにイエス様が十字架にかかり復活された、その喜びを知る人は、どんな苦難も痛みも逆境をも、その救いに至るための通過点であることを証しする、意味ある価値ある出来事としていけるのです。
(2021年4月25日週報より)